西アジア(中東)の特徴

西アジア(中東)の特徴と成り立ち

西アジア(中東)って聞くと、石油や砂漠、宗教の聖地…そんなイメージが浮かぶかもしれません。でも、実際にはそれだけじゃ語りきれないくらい奥深くて複雑な地域なんです。結論からいってしまえば、西アジアは文明発祥の地であり、宗教・民族・資源・地政学が絡み合う世界でも特に多層的な地域なんです。今回はその特徴と成り立ちを、地理・歴史・文化の面からひも解いてみましょう。

 

 

地理的にはどこからどこまで?

西アジアの地理的範囲を示す地図

西アジアの地理的範囲を示す地図

出典:Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0より

 

「西アジア」っていう言葉、実は定義がすごくあいまい。人によっては「中東」と言ったり、「中近東」と言ったりしますが、だいたいの共通認識はあります。まずはその範囲を確認しておきましょう。

 

西アジア=中東?

トルコ、イラン、イラク、サウジアラビア、シリア、イスラエル、ヨルダン、レバノン、クウェート、UAE、カタール、オマーン、イエメンなどが西アジアに含まれます。「中東」はこの地域を指す別名で、ヨーロッパから見た“中間の東”という意味から来ています。

 

西アジア諸国

アラブ首長国連邦

イエメン

イラン

イスラエル

イラク

オマーン

カタール

クウェート

サウジアラビア

シリア

レバノン

パレスチナ

バーレーン

ヨルダン

 

乾燥帯と高地が入り混じる地形

アラビア半島の砂漠地帯、イラン高原、メソポタミアの平野、トルコの山地など、自然環境は意外と多様です。ただし全体的に乾燥していて、農業には不向きな土地も多いです。

 

文明発祥の地:メソポタミアと古代都市

ウルのジッグラト(右前方からの眺め)

メソポタミア文明を象徴するウルのジッグラト

出典:Photo by Kaufingdude / CC BY-SA 3.0より

 

西アジアは人類史の超重要エリア。なにせ最初の文明が生まれたのがこの地なんです。農耕、文字、都市、国家――そのすべてがここから始まったと言ってもいいくらい。

 

ティグリス・ユーフラテス川流域の繁栄

メソポタミア文明は、現在のイラクにあたる地域で、紀元前3000年ごろに誕生しました。シュメール人、アッカド人、バビロニア人、アッシリア人と続き、人類史をリードする都市国家が次々に生まれました。

 

都市文化と法制度の源流

ウルやバビロンといった古代都市では、宗教施設や商業活動が盛んで、ハンムラビ法典のような成文法も登場。「都市=文明」の起点となった場所なんです。

 

宗教の聖地と信仰の交差点

エルサレムの岩のドーム

エルサレム旧市街の神殿の丘に建つイスラム教の聖地「岩のドーム」

出典:Photo by Ray in Manila / CC BY 2.0より

 

この地域の最大の特徴のひとつが、世界三大宗教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教)すべてがこの地にルーツを持っているということ。しかもそれぞれが重なり合う聖地があるため、今も争いの火種になることがあります。

 

エルサレムを巡る宗教的意義

ユダヤ教では神殿の跡、キリスト教ではイエスの足跡、イスラム教では昇天の地として、エルサレムは三宗教にとっての特別な都市。だからこそ、宗教的にも政治的にも非常にセンシティブな場所なんです。

 

イスラム教の広がり

ムハンマドがブラークに乗る姿の肖像画

イスラム教の預言者ムハンマドが伝説の動物ブラークに乗って昇天する場面

出典:Public Domain via Wikimedia Commonsより

 

7世紀のムハンマドの教えから始まったイスラム教は、瞬く間にアラビア半島を超えてアジア・アフリカ・ヨーロッパへと広がりました。メッカとメディナは今も世界中のイスラム教徒の心の拠り所です。

 

資源と地政学が複雑に絡む現在

中東地域の石油・ガス資源地図

出典:Raimond CastilloによるPixabayからの画像より

 

現代の西アジアは、宗教や歴史だけでなく、石油資源と国際政治の舞台としても世界中から注目されています。ただしその裏には、民族対立や植民地支配の影も色濃く残っています。

 

石油=富とリスクの両刃

サウジアラビア、イラン、イラク、UAEなどは世界有数の石油埋蔵国。これが経済成長の原動力になる一方で、国際的な争いの種になることも。「石油があるからこそ不安定」という皮肉もあるんです。

 

多民族国家と対立の構図

アラブ人、ペルシャ人、トルコ人、クルド人、ユダヤ人などが入り混じるこの地域では、民族・宗派の対立が続いています。国家の枠組みも多くが植民地時代に無理やり引かれた線なので、今もそれが火種になっているんです。

 

西アジア(中東)は、「文明のゆりかご」であり「宗教の交差点」、そして「資源の最前線」でもあるという、世界でも類を見ない多層的な地域です。その分、問題も多いけれど、それは裏を返せば、それだけ歴史と意味が詰まっているってこと。ニュースで見かけるたびに、ちょっと背景に思いを馳せてみると、見え方が変わってくるかもしれませんよ。