


東南アジアのケッペン気候区分(1991-2020)
赤道付近のAf/Amが卓越し、内陸や高地でAwやC系が現れる。
季節風と山地地形が地域差をつくる。
出典:『Koppen-Geiger Map v2 Southeastern Asia 1991-2020』-Photo by Beck et al./Wikimedia Commons CC BY 4.0
東南アジアって、「年中あったかい」「雨が多い」「ジャングルが一面に広がってる」──そんなイメージ、ありますよね。
実際、その印象は大きく外れていません。ただし、それだけで語ってしまうのは、ちょっともったいないところです。
というのも、東南アジアの気候は一枚岩ではありません。島なのか大陸なのか、海に近いのか山がちなのか。その違いだけで、空気の表情がガラッと変わってきます。暑さの質も、雨の降り方も、場所ごとにけっこう違うんです。
東南アジアは「熱帯モンスーン気候」を中心に、「熱帯雨林」「サバナ」「高地気候」など、4つの気候帯が入り組む多様な地域。
一見すると「全部同じ暑い地域」に見えて、実はかなり表情豊かなんです。
この記事では、その4つの気候区分について、それぞれどんな特徴があるのか、そしてどの地域に多いのかを、順番に見ていきます。気候から東南アジアを眺めると、土地の個性がぐっと見えてきますよ。
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雨季の熱帯モンスーン林(カンボジア・リーム国立公園)
南西モンスーン期に湿った空気が流入し、濃い緑と厚い雲が景観を支配する。
雨季と乾季のコントラストが大きいAm気候の雰囲気を伝える。
出典:『Nature of Cambodia. Ream National Park. Tropical rain season』-Photo by Dmitry Makeev/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
カンボジア、タイ中部、ベトナム北部、ミャンマー南部、フィリピン中部などで見られるのが、この熱帯モンスーン気候です。最大のポイントは、モンスーン(季節風)の影響で、雨季と乾季がはっきり分かれるところ。季節が切り替わると、空気の雰囲気までガラッと変わります。
一年中暑いだけじゃなく、「雨の季節」と「乾いた季節」がくっきり存在するのが、この気候のいちばんの特徴。
5月~10月は南西モンスーンが吹き込み、降るときは本気。まさにバケツをひっくり返したようなスコールが、前触れなくドーンと来ます。
湿気もかなりのもので、外に干した洗濯物がなかなか乾かない──そんな日常風景もこの地域ならではです。
一方、11月~4月は乾季。気温自体は高めですが、空気がカラッとしていて体感はかなり楽になります。
実はこの時期、観光のベストシーズンと重なることも多く、「東南アジアは過ごしやすい」という印象が強まるのも、この乾季を体験しているからなんですね。
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一年中雨が多い原生熱帯雨林(マレー半島・タマンネガラ国立公園)
高温多湿が通年続き、常緑広葉樹が密に重なって林冠をつくる。
Af気候らしい濃密な緑と湿潤な空気感が前景化する景観。
出典:『Taman Negara, Malaysia, Primary tropical rainforest』-Photo by Vyacheslav Argenberg/Wikimedia Commons CC BY 4.0
インドネシア(スマトラ島・カリマンタン島)、マレーシア、パプア、ブルネイなど、赤道にぐっと近い地域で見られるのが、熱帯雨林気候です。
特徴はとてもシンプル。一年を通して雨が多く、季節のメリハリがほとんどないこと。東南アジアの中でも、いちばん“ジャングル感”が強いエリアですね。
暑さも湿気も雨も、すべてが年中フル稼働──それが熱帯雨林気候の基本スタイルです。
この地域では、一年を通して気温は25~30℃以上が当たり前。さらに湿度80%超えも珍しくありません。
ムワッとした空気、濃い緑、視界を埋め尽くす森林。こうした環境のおかげで、動植物の種類は非常に多く、生物多様性の宝庫とも呼ばれています。
モンスーンの影響自体は受けているものの、そもそもの雨量が桁違い。年間降水量は2000mm超えがごく普通です。
「今は雨季」「今は乾季」と区切るのが難しく、体感としてはずっと雨が降ったり止んだりしているような気候だと考えると、イメージしやすいでしょう。
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乾いた草原で放牧されるバリ牛(ティモール島・サバナ景観)
雨季と乾季がはっきりするAw気候では、草原が広がる季節に放牧が重要になる。
草地と家畜の組み合わせが、乾いた熱帯の暮らしを象徴する。
出典:『Grassy savanna and Bali Cattle in wet season, Daudere, Lautem, Timor-Leste (23 Apr 2006)』-Photo by Colin Trainor/Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0
インドネシア・ティモール島、タイ北東部、ミャンマー内陸部、ラオス南部など、海から少し離れた内陸地域で見られるのが、サバナ気候です。
同じ熱帯でも、こちらは乾季がやや長め。東南アジアの中では、比較的カラッとした空気を感じやすいエリアになります。
「雨が降る時期に一気に育ち、降らない時期はじっと耐える」──そんなリズムで成り立つ気候。
雨季に入ると、景色が一変。草原や畑が一気に緑で埋まります。
この短期集中型の雨を前提に、農業では焼き畑や輪作といった方法が発達してきました。限られた雨をどう活かすか、その知恵の積み重ねです。
一方、乾季に入ると土は乾き、風も強まり、畑仕事にはなかなか厳しい環境になります。
そのため、地下水をくみ上げたり、ため池を整備したりと、水の確保が暮らしの安定を左右する重要なポイントになってきました。
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マレーシア高地の茶畑
標高の高い山地で、気温が下がり霧が出やすい。
斜面の茶畑は冷涼な環境を活かした農業景観をつくる。
出典:『Tea plantation on cameron』-Photo by Formulax/Wikimedia Commons CC BY-SA 2.0
ベトナム北部の山岳地帯、ミャンマー北部、タイのチェンマイ周辺、マレーシアやインドネシアの高原地帯など、標高が高い場所では、少し毛色の違う気候が顔を出します。それが、一年を通して比較的涼しい「高地気候」。
「東南アジア=蒸し暑い」というイメージが、ここではいい意味で裏切られます。
同じ東南アジアでも、標高が変わるだけで体感温度は別世界。
山がもたらす、ちょっとした気候の魔法ですね。
標高1000mを超える地域になると、昼間は過ごしやすくても、朝晩はぐっと冷え込みます。条件次第では10℃以下になることもあり、「え、本当に東南アジア?」と感じる人も少なくありません。
薄手の上着が欲しくなる夜──そんな光景が普通にあります。
この気候の強みは、気温が穏やかで病害虫が比較的少ないところ。そのため、高原野菜やコーヒー豆の栽培に向いており、農業の重要拠点になっている地域も多いです。
さらに、涼しさを求めて人が集まる避暑地・観光地としても発展しており、都市部とはまったく違う表情を見せてくれます。
以上のように、東南アジアの気候は、「どこも同じように暑い地域」という一言では片づけられません。 モンスーンの影響を強く受ける場所もあれば、赤道直下で一年中雨に包まれる地域もある。さらに、内陸の乾きやすい土地や、標高の高い涼しい高原までそろっています。
モンスーン・赤道・内陸・高地──これらの条件が重なり合って、東南アジアの気候は驚くほど多彩。
ひとくちに東南アジアと言っても、その中身はかなり違うんです。
そして、気候が変われば、人々の暮らし方や農業の形、食文化も自然と変わっていきます。
そこに目を向けてみると、東南アジアという地域が持つ奥深さが、ぐっと立体的に見えてくるはずですよ。
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